燃料電池自動車のしくみを知ろう!
ガソリン内燃機関自動車と比べると、とってもクリーンなクルマですが、燃料補給のためのインフラの整備などが今後の課題です。
燃料電池自動車(FCV)の基本構造
FCVの5つのメリット
1.有害な排出ガスがゼロ、または少ない
走行時に発生するのは水蒸気のみです※。 大気汚染の原因となる二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、浮遊粒子状物質(PM)はまったく排出されません。 また、ベンゼンやアルデヒドなどの有害大気汚染物質の排出もありません。
※ 水素を直接燃料として使用する直接水素方式のFCVの場合
2.エネルギー効率が高い
現時点で、ガソリン内燃機関自動車のエネルギー効率(15~20%)と比較して、2倍程度(30%以上)と非常に高いエネルギー効率を実現しています。 燃料電池自動車は、低出力域でも高効率を維持できるのが特長です。
3.多様な燃料・エネルギーが利用可能
天然ガスやエタノールなど、石油以外の多様な燃料が利用可能なため、将来の石油枯渇問題にも十分に対応できます。 また、太陽光やバイオマスなど、クリーンで再生可能なエネルギーを利用して水素を製造することにより、環境への負荷を軽減します。
4.騒音が少ない
燃料電池は電気化学反応によって発電するため、内燃機関自動車と比べて騒音が低減できます。 車内の快適さはもちろん、都市全体の騒音対策にも効果が期待されます。
5.充電が不要
長時間の充電が必要な電気自動車と違い、ガソリン内燃機関自動車と同様に短時間の燃料充填が可能です。 また、1回の充填による走行距離も電気自動車よりも長く、将来はガソリン内燃機関自動車と同程度になると考えられています。
燃料補給方法は?
燃料電池自動車には、水素ステーションから直接水素を補給する「直接水素形」と、水素以外の燃料を補給して車載改質器で水素を製造する「車上改質形」の2つの種類があります。 この2つを、エネルギー効率、二酸化炭素(CO2)削減などの観点から比較してみると、「直接水素形」の方がより理想的だと考えられています。
水素の貯蔵・車載方法は?
高圧水素タンク | 水素(気体)を高圧(例えば35MPa)に圧縮して専用の高圧タンクに貯蔵・車載します。 |
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水素吸蔵合金 | 水素(気体)を特殊な合金に吸蔵して貯蔵・車載し、加温により水素を取り出します。 |
液体水素タンク | 水素を極低温(-253℃)にして、専用の遮熱タンクに貯蔵・車載します。 |
使用燃料は?
現在、使用燃料の種類としては「水素」「メタノール改質」「ガソリン改質」などが検討されています。 長期的には水素が使用されると考えられていますが、水素は燃料供給などの面で課題があるため、現在はインフラの整備や取扱い、価格、効率などの面で、各種燃料を比較、検討している段階にあります。
水素 | ○走行時に排出されるのは「水」のみで、"排気ガスゼロ"の理想のかたちになります。 ●水素の貯蔵方法、インフラの整備などが課題になっています。 |
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メタノール | ○液体燃料のため、内燃機関自動車と同じように利用できます。 ●改質のために250℃程度の加熱が必要となります。また、メタノールスタンドの整備も必要です。 |
ガソリン | ○既存のガソリンスタンドが利用可能なため、内燃機関自動車と同じように利用することができます。 ●改質のために800℃近くの高温が必要になります。また、ガソリンに硫黄分が含まれていますと、改質性が劣化してしまいますので、CHF(クリーンハイドロカーボンフューエル)が必要となります。 |
補助電源は?
燃料電池自動車は、燃料電池だけでも走行できますが、電池またはキャパシタのような補助電源を併用したハイブリッド方式も考えられています。
燃料電池のみの場合 | システムの簡略化を狙い、燃料電池だけでエネルギーの供給を行う方式です。 ハイブリッド方式のようなエネルギー回収ができず、車上改質形では始動に時間がかかります。しかし、価格、搭載性などの面ではハイブリッド方式よりも優れています。 |
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ハイブリッド方式の場合 | 補助電源に制動エネルギーを回収し、始動性や応答性をはじめ、エネルギー効率を向上させます。 将来の動力機関は高エネルギー効率であることが重要であるため、ハイブリッド方式になる可能性が高いと思われます。 ただし、電池などの蓄電エネルギー装置が必要となり、システムが複雑という課題があります。 |