健康影響
JARIでは、1970年代から、自動車排出ガスが健康に及ぼす影響の調査研究に取り組んできました。1980年代、ディーゼルエンジン排出ガス(以下、DE)の発がん性の議論が高まり、JARIでは大規模な発がん性試験を実施しました。その結果、現実的な大気粒子濃度レベルのDEではがんの発症を亢進しないことを世界に先駆け明らかにしました。その後も、1990年代には気管支炎、花粉症への影響、2000年代には心血管系疾患、喘息、生殖器の発達への影響、さらに、胎児・新生児期の曝露の健康影響について研究しました。これらの成果は、世界保健機関(WHO)、米国環境保護局(US EPA)などの報告書や論文で引用されています。
最近では、自動車のテールパイプから直接排出される粒子状物質(黒煙)は大幅に低減されています。しかし、その一方で、排出ガス中の揮発性有機成分が大気中で二次粒子の生成に寄与することが指摘されており、その健康影響はほとんど知られていません。そのため、大気中の光化学反応を再現可能なスモッグチャンバーを作製し、二次粒子を含む自動車排出ガスの動物曝露実験を実施しています。さらに、ヒト気道上皮細胞を用いた自動車排出ガスの細胞曝露実験、沿道住民を対象とした交通関連大気汚染および道路交通騒音に関する疫学調査など、様々な研究手法を駆使し、自動車が係わる健康影響の解明を目指しています。その成果については、学会や論文発表を通し、世界に情報を発信しています。
自動車排出ガスの細胞曝露実験システム